「機械を使う仕事ではありますが、最後は人の手やと思っています」
――辻野製作所 代表が語る、町工場のものづくりと次世代への承継

辻野製作所 代表取締役 辻野保次さん

――まず、辻野製作所のはじまりについて教えてください。

うちは、先代である父が堺市福田で創業した町工場です。私が工場に入ったのは18歳のときでした。

もともとは工業高校を出て、役所の土木関係に進むことも考えていたんです。ただ、給料面などを考えて、父の工場に入ることにしました。当時は、父と母、それから親戚のおばちゃんで回しているような、本当に小さな工場でしたね。

――若いころから家業に入られたのですね。跡を継ぐことを意識されたのはいつごろですか。

20歳のときに、父が病気で倒れたんです。そこで「これは自分が継がなあかんな」と覚悟を決めました。
まだ若かったですけど、迷っている場合ではなかったですね。そこからは、自分がこの工場を守っていくんやという気持ちでやってきました。

――現在は、どのようなお仕事をされていますか。

主な仕事は、切削加工、穴あけ加工、ねじ切り加工です。

商社さんやダイカストメーカーさんなど、現在は13社ほどとお取引をさせていただいています。最終的には、パナソニックさんの電灯関係、川崎重工さんの自転車やバイク部品、シマノさんの釣具などに関わる部品も扱っています。

――町工場の仕事で、大切にされていることは何ですか。

やっぱり手作業の感覚ですね。

機械を使う仕事ではありますが、最後は人の手やと思っています。図面どおりに加工するのはもちろんですが、素材の感触や、ちょっとした違和感に気づけるかどうか。そこは経験がものを言います。

体が感覚を覚えるまでには、半年くらいかかります。すぐにできる仕事ではないですし、だからこそ、日々の積み重ねが大事なんです。

――最近、新しい設備も導入されたそうですね。

はい。新しくマシニングセンターを導入しました。これで作業効率はかなり良くなると思います。

以前に導入した機械は保証協会を通じて融資を受けましたが、今回はリース契約を選びました。設備投資は大きな決断ですが、これからの辻野製作所を考えると必要な投資だと思っています。

――法人化されたのも、将来を見据えてのことですか。

そうですね。個人事業から株式会社にして、この8月で2年になります。

法人化した理由は、大手企業さんとの取引を見据えたこと、そして事業承継を本気で考えるようになったことが大きいです。

――息子さんたちも仕事を手伝われているそうですね。

はい。今は25歳と22歳の息子たちも手伝ってくれています。将来的には、事業を継いでいってほしいと思っています。

私が一人でやっているだけでは、もし自分が倒れたときに取引先さんにも迷惑をかけてしまいます。後継者がいるということは、お客さんにとっても安心材料になるんです。

――現在の会社の体制を教えてください。

今はパートさんも含めて6人で工場を回しています。決して大きな会社ではありませんが、これから売上も伸ばしていきたいですし、第二工場も検討しています。

小さいながらも、次の世代につなげていける形をつくっていきたいですね。

――今、経営面で大変なことはありますか。

切削油も高くなっていますし、部品や材料も値上がりしています。

ただ、それをすべてお客さんに転嫁できるかというと、なかなか難しいのが現状です。こちらとしても努力しながら、なんとか対応しているところです。

――これまでで一番厳しかった時期はいつですか。

一番厳しかったのは、リーマン・ショックのころですね。

当時は取引先も1社か2社くらいしかなく、丸1年、まともな仕事がなかったんです。それでも私は、工場のシャッターを閉めるのが嫌いでね。仕事がなくても、シャッターだけは開けていました。

その時期は、水道部品の内職のような仕事を、妻と一緒にやって何とか乗り切りました。あのころに比べたら、今は本当にありがたいです。

――そこから、どのように取引先を増やしていかれたのですか。

少しずつですね。急に増えたわけではありません。

一つひとつの仕事をきちんと仕上げて、納期を守って、約束を守る。その積み重ねで、少しずつ取引先が増えていきました。

結局、仕事は信頼の積み重ねやと思います。

――人とのつながりも大きかったのでしょうか。

本当にそう思います。私は人に恵まれてきました。

うちは人があまり辞めない職場ですし、お客さんにも、外注先さんにも恵まれています。周りの人に助けてもらいながら、ここまで続けてこられたと思っています。

――最後に、これからの辻野製作所についてお聞かせください。

父の代から続く町工場としての良さを大切にしながら、次の世代にしっかりつないでいきたいです。

派手なことはできませんが、目の前の仕事を丁寧に仕上げて、信頼を積み上げていく。それがうちのやり方です。

息子たちにも、その姿勢を受け継いでもらいながら、これからの辻野製作所を一緒につくっていけたらと思っています。